鉄鋼一次指定商社・コイルセンターとして、私たちの生活に欠かせない鉄製品を加工し、さまざまな業界へ提供する古賀オール株式会社。同社では、20年以上前から職場環境の改善を全社を挙げて行っており、今回のマッスルスーツの導入もその一環だったといいます。
企業でのサポートツールの導入は、トップダウンになりがちで現場になかなか浸透しないという声も聞く中で、同社はどのようにして改善活動を現場にまで落としているのか。マッスルスーツを導入した経緯、その効果と合わせて、経営企画部部長/SCRAMチーム工場部門担当の谷内様にお聞きしました。
▼ご利用中のマッスルスーツ:ソフトフィットSM&MLサイズ
現場でのスムーズな導入には理由があった!改善活動歴20年の製造業の取り組み【古賀オール】
創業70年企業の現場改善策
――古賀オール様の事業について教えていただけますか。
当社は設立70周年を迎える鉄鋼一次指定商社・コイルセンターです。多くの分野で使用される「鉄」を加工し、さまざまな業界に納品しています。鉄を使う業界は多岐にわたり、必要とされる形状やサイズなどもすべて異なります。そのニーズすべてに製鉄メーカーが対応することは難しいため、我々が中間に入ってコイルや鋼材を加工し、各業界の各お客さまが求める製品にして納品するというわけです。
身近なところで言うとたとえば、建物の扉、天井の梁、ロッカー、パーテーション、エアコンの部品、蛍光灯本体など、いろいろなところに我々が加工した鉄製品は使われています。
――扱うものが鉄となると、日常業務でも体に負担がかかる作業が多そうです。
負担は大きいですね。人手をかけている作業で負担が大きいものだと、加工した鋼板が反っていないかを確認するために鋼板を垂直にして確認する「立てかけ検査」、商品の下にスキッドという木の枠を履かせるのですが、そのスキッドの整理・整頓作業など、数十キロのものを持ち上げる作業が一日に数十回は発生します。もっと重い鋼板を扱う場合はクレーンを使うこともありますが、今お話しした作業などは、人の手で行うしかないのが現状ですね。
――自動化のための設備などを入れるということも検討されましたか?
先ほども申しましたが、弊社は今年で設立70周年。設立当時は今ほど便利な機械もないので、人がほとんどすべての作業を行っていました。そう考えると、作業間の移動距離を短くしたり、次の作業にすぐ移動できるよう導線を短くしたりするから、工場の作りも自然となるべく人が効率よく動けるような作りになります。そういう作りが前提だと、じゃあ大型設備を入れて効率化しましょう、というのはスペースの都合上難しくなります。そういった状況の中で、どう業務を効率化・省力化できるか。そこを常に考えています。
決め手は導入コストと軽さ
――古賀オール様にはマッスルスーツを11台ご導入いただきました。導入することにしたきっかけは何だったのでしょう。
私の仕事は、現場の働き方を改善すること、また改善活動を促進することです。私自身、若い頃は現場にいたので、腰の負担についてはよくわかっていましたし、ずっと懸念を持っていました。解決策として腰に巻くサポーターも検討したのですが、サポーターは腰が痛くなってからつけるものです。そうではなく、予防的に何か対策が打てるものはないか、と常々考えていました。
そうしてアンテナを張っていたところ、テレビCMで見て、マッスルスーツのことを知りました。別支店の事業所からもこんなものありますね、とマッスルスーツの名前が出たり、たまたま出かけた展示会でも目について…同じタイミングで複数のところで見たり聞いたりすることが続き気になり始めました。その2か月後くらいには導入を検討しはじめて、実際現場でデモを行いこれならば、と導入に至りました。
――マッスルスーツのどんなところに惹かれましたか。
大きな理由は価格です。私が過去見聞きしていたパワードスーツの多くは非常に高価なものでした。1台何百万もするものを全支店で導入するのはさすがに難しいなと思っていましたが、一方でマッスルスーツは比較的安価で導入しやすいのが魅力的でしたね。
もう1つの理由は扱いやすさです。多くのパワードスーツは大きいし、重量もあるし、気軽に扱えません。狭い工場の中では使いにくいこともあります。その点、マッスルスーツは軽量で使いやすそうだなと思いました。
他社の製品とも比較して、導入するならイノフィスのマッスルスーツだなとあらためて感じました。
20年来の職場改善活動が活きた!現場へのスムーズな導入も実現
――実際にマッスルスーツを装着して、どう感じましたか。
展示会で最初に実物を見たときは正直、半信半疑だったんです。マッスルスーツは他製品に比べると見た目も華奢に感じましたし、これで本当に重作業の負担軽減ができるのか? と。
ところが、実際につけてみて「あれっ!? 本当に楽になった!」と驚きました。展示場でマッスルスーツを装着した人が、皆さん一様にニヤニヤしていたのですが、その理由がわかりました。すごく不思議な感覚なんですよ。
ブースの方から、マッスルスーツをつけることで踏ん張らなくていいから体が楽になるんだと説明を受けて、なるほどと感心しました。
――そこから谷内様が主導されてマッスルスーツの導入を進めていかれました。
はい。現在、全国に工場が4ヶ所あるのですが、そのすべての拠点にマッスルスーツを導入しています。
導入の主導は私のほうでとりましたが、各拠点で最寄りの販売店やホームセンターに足を運んでもらって導入前に実際試してもらう、ということは必ずするようにしました。
――谷内様のように改善活動の中心になる方がいらっしゃるからこそ、各拠点への導入もスムーズに進んだのですね。
たしかに改善活動を主導する専任者がいないと、こういった取り組みはうまくいかないと思います。他社さんでも同じようなことをやっているお話しを耳にしますが、なかなかうまくいかないということは聞こえてきます。なぜ浸透しないのかとよく聞いてみると、やはり誰かが兼任で改善業務を行っていたり、トップダウンでおりてきたりといったケースが聞かれます。
当社の場合は部署ごとに改善活動の取り組みを発表する場を設けたり、それを会社が評価したりといった、会社をあげての改善活動を推奨する活動を20年以上続けています。私のような役割の者がいるというのもその一環だと思います。こういった活動を通じて、社員も職場の改善について普段から考えてくれているという土台があったのが大きいと思います。
――現場でのマッスルスーツの効果をどのように感じていますか。
使用感については、実際に現場で使用している内田からお答えします。
内田様(以下、敬称略) 最初につけたときは、「なんでこんなに軽く持てるんだろう?」と驚きました。踏ん張って、持ち上げるという作業が多いのですが、マッスルスーツを装着しているとスッと楽に持ち上がるんです。
――マッスルスーツを使うようになってから体の負担はどう変わりましたか。
内田 マッスルスーツを使う以前は、仕事の度に腰の疲労感を感じていました。幸い、これまで腰を痛めたことはないのですが、いずれ痛めるだろうな……と思っていました。今はそれほど力を加えずに重たいものが上げられるとわかっているから、必要なときには使うようにしています。会えてよかったな、と思っています。
――今後、マッスルスーツを活用して職場をどのように改善していきたいと考えていますか。
当社では社をあげて改善活動を行っていますが、通常行っているのは作業の効率化などの改善です。なので、今回のような身体的負担を軽減するといった改善は初の取り組み。
たとえばはきやすい靴を履いてもらったときなんかを想像してもらうとわかるかと思いますが、感想を聞くと歩きやすくていいですね、という答えは出てきますが、じゃあどれくらい疲れなくなった?と聞かれても困ってしまいますよね。この靴の例と同じく、こういった取り組みは数値化するのが難しく感覚的な効果測定にはなってしまいますが、とても重要なことだととらえています。
こういった取り組みを続けて長期的に身体の負担なく仕事ができる環境を整え、若くても年配の人でも同じように仕事ができるようになるといいなと思います。「力が必要だからこの人しかできない」というのではなく、仕事は誰でも同じようにできるのが理想です。今回のマッスルスーツは、そのための第一歩になると感じています。