茨城県小美玉市に本社を構える株式会社ユニオンファームは、⽇本最⼤の農業資材店運営会社であるアイアグリ株式会社の有機栽培技術の研究チームとして、2000年に創業した農業法人です。「新農創造」の経営理念のもと、新しい農業者の育成をし新しい農業のモデルづくりにチャレンジし続けています。
県内複数の市町村にまたがり、総面積5ha、ビニールハウス200棟を数える関東屈指の大規模農業法人をいかに効率的に運営し、継続的に収益化していくか。そこには従業員の健康を守るために日々先進的な有機栽培農業を模索し続ける、経営者の真摯な取り組みがありました。代表取締役社長の玉造洋祐さんにお話を伺いました。
▼ご利用中のマッスルスーツ:タイトフィット ML&SMサイズ
進化させてきた有機野菜生産で、機械化できなかった春菊の収穫。マッスルスーツ導入で長年の課題を解決【株式会社ユニオンファーム】
大規模有機栽培で「新しい農業のモデルづくり」
――ユニオンファームの事業内容について教えてください。
ユニオンファームは有機野菜の生産とキャベツの生産請負業務をしており、主軸は有機野菜です。従業員は、正社員とパート含めて40名ほどの規模になります。
メインは一年中出荷できる有機野菜の生産で、たとえばチンゲン菜や水菜、小松菜、パクチーなどですね。それ以外には季節野菜とよばれる旬の野菜を常時6~7品目作っています。夏場でしたらエンサイ(空心菜)、モロヘイヤ、ミニトマトなど、そして秋から春先にかけては春菊やレタス、リーフレタスなどを生産しています。
――御社で課題となっていたことはありますか?
農作業のパートさんは全員女性で、平均すると40代後半ですが、19歳から76歳までいます。70歳過ぎていてもご本人も働き続けたいし、実際まだまだ働けるんですよね。
パートさんの身体に負担がなく、かつ日常的に働いてもらう環境づくりは以前から取り組んでいます。たとえば年中収穫作業のあるホウレン草や小松菜の品目は、作業器具ややり方も進化しており、我々も積極的に取り入れています。ただ春菊の収穫については選別のスキルも必要なので器具や機械による省力化が難しく、ずっと中腰で作業するのでパートさんの腰にも相当な負担がかかる。これは、我々の中で長く残り続けてきた課題でした。
――ユニオンファーム様にはマッスルスーツEveryを10台導入いただきました。そのきっかけについて教えてください。
装着型のものもいろいろ検討してきたのですが、高額なものが多く、数十人の作業者に着けてもらおうと思うとコスト面で難しい。一台が数十万円になってしまうと、我々の投資対象ではなくなってしまいます。その点マッスルスーツが10万円台で今の機能というのは魅力でした。いろいろな展示会に足を運ぶなかで、マッスルスーツを実際に装着してみて、中腰姿勢の腰の負担が軽減されると私自身も実感できたことから、少しでも多くの従業員に使ってもらおうと、まずは10台の導入を決意しました。
大規模農業栽培の中でも、機械化しきれない作業に
――どんなシーンでマッスルスーツを利用いただいていますか?
導入当初は、春菊とキャベツの収穫作業に活用しようと思っていました。春菊の収穫は、腰くらいの高さに成長した春菊の中から、売り物として適した状態のものを選別して採る作業です。膝の高さくらいまでかがんで茎を採り続け、1時間以上連続して中腰姿勢でいる必要があるので、マッスルスーツはとても重宝しています。
一方、キャベツの収穫でも使ってもらってみたのですが、キャベツの収穫では畝(うね)をまたいで収穫し、横に平行移動しながらスピーディーに作業を行うことが難しく、転倒などの危険を伴う可能性もあるという意見が出て見送りになりました。
そこで収穫に代わる用途として思いついたのがキャベツ畑の草取りです。キャベツを栽培する畑には雑草も生えてくるため、畝をまたぎながら中腰姿勢で雑草を取り続ける。この作業はある意味、春菊よりも中腰姿勢が低く、腰への負担が大きいのです。
当社の場合はパートさんには基本的に、終日同じ作業をお願いしているので、まずは身体の負担を多く感じている人から優先して使っていってもらえればと考えています。
サスティナブルの一環でマッスルスーツを導入。100年続く農業法人を目指して
(写真)春菊の収穫作業。70代のパートさん(左)のほうが作業が早い
――玉造社長は、農業法人の経営は初めてだったそうですね。
前職は農業資材の営業や企画の仕事をしていましたが、自身が農業そのものにかかわったことはありませんでした。さまざまなタイミングとご縁が重なり、30歳を前にしてユニオンファームの経営者になったわけですが、サラリーマンからの転身でしたし、最初は戸惑いも多かったです。それこそ、パートさん同士の人間関係トラブルでせっかく入った人が何人も退職して…なんて、前職ではまったく経験なかったですから(笑)
今年で15年目。持続可能な、100年続く農業法人を目指して、今私はその素地作りをしている感じです。魅力的な、潰れない会社になれば、就職したいという人も増えてくるでしょうしね。
――サスティナブル(持続可能性)化の一環でアシストスーツを取り入れたということもあるのでしょうか?
農業経営に関わってみて、やはり農業は高齢化と、後継者が生まれないという問題がネックであり、持続可能性がキーワードだと感じました。もちろん、会社の経営が成り立たないと農業そのものが成り立たないので、収益面・財務面から会社が維持できるような経営を心がけてきましたし、いろいろな器具・道具や、作業負荷の軽減を工夫して、働く人一人ひとりの就労の持続可能性を探ることも我々が大事にしてきたことです。その中で、作業の中での腰への負担という課題にマッスルスーツが一つの解決策となると考えました。
収穫作業は「経験の長さ=スキルの高さ」。長く働いてもらうためにマッスルスーツを導入し、収益力アップに期待
――農業経営をされる中で、さまざまな変革をしていかれたのでしょうか。
農業、特に有機栽培において、人は要(かなめ)です。従業員の働く時間については、農業法人で他に先駆けて8時間労働・週休2日制を創業から導入しました。
また、元来、農作業という仕事は、長期間で積み重ねるスキルの差が如実に出る職業です。どんな人でも、1年目と5年目では格段の違いが生まれます。身体が覚えていくんですね。たとえば春菊の収穫作業でも、この葉っぱは採っていいとか、この色合いでは取引先に出せないとか、それらを瞬時に選別して収穫する作業も早くなり手際も良くなる。勤めて数年の40代のパートさんより、10年以上働いている70代のパートさんのほうが作業が早く、正確なんです。
だから我々としても、パートさんたちには定年を設けず、いくつになってもどんどん活躍してほしいと思っていますし、長く在籍するとスキルが上がるので収益力が高まり、少ない人員で回せるようになるので、経営側にとっても従業員の定着率を高めるために、作業その他の面を通じてさまざまな工夫をしています。そのための環境整備の一つがマッスルスーツの導入でもあるわけです。
「これ買ったから現場で着けとけ」では浸透しない
――最後に、マッスルスーツに期待することはありますか?
アシストスーツ自体がまだまだ黎明期というか、まだ多くの人が着けたことも見たこともないという段階だと思うんです。もっともっとこれから改良されていって、いろんなメーカーさんから出るようになってもらわないと(笑)
マッスルスーツの活用についても、「これ買ったから現場で着けとけ」では浸透しないことはよく分かっていますし、こういうものに限らず新しいシステムなども入ったとたんに「使いづらい」とまずネガティブな反応が出るのは過去の経験から分かっています。なので、そういったアレルギー感がある中で、まず自分から、粘り強く浸透させていこうと思っています。
農業の高齢化が言われて久しい。高齢になっても働き続けないといけない社会になっている。すべてがデジタル化・機械化するわけではないし、たとえば軍手なんかは1足10円のものからより高機能の1,000円を超えるものまで、いまだに使い続けられています。「作業者を保護するもの」はいつまでも残り続けていくものです。その意識を強く持つ業界・分野が増えてきて、使う人も増えてくれば、それがコストダウンにつながってより一層我々も使いやすくなりますし、マッスルスーツもそうなっていくことを期待していますよ。
――ありがとうございます。ご期待に沿うべく、これからも頑張ります!