勝田産業株式会社は、戦後間もない昭和21年創業の歴史ある住宅資材メーカーです。「誠実なる和をもって知的に職務を遂行し 顧客に喜びを与え広く社会に貢献し 己の発展に帰す」を企業理念に掲げる同社は、時代のニーズを敏感に察知し、独自の「省力化工法」を軸に環境対応型企業として進化を続けています。今回は創業家と二人三脚で同社を支える取締役統括部長の高井敏晴様にお話を伺いました。
▼ご利用中のマッスルスーツ:タイトフィットMLサイズ
発売初期から導入して省力化を追求。作業効率の改善と、半年間休職率ゼロに貢献【勝田産業】
「個の力」に依存せず、省力化を追求してマッスルスーツに注目
――勝田産業の事業内容について教えてください。
創業時は「勝田木工所」として木製家具を制作していました。二代目の現社長からパネル工法を主体とした集合住宅の工事を受注する企業に転換。そして現在に至っては戸建て住宅の構造用パネルをメインに受注する会社に変貌を遂げてきました。当社独自の「省力化工法」とは、木造戸建て住宅で、通常約一週間程度かけていた現場大工さんによる上棟作業を、壁パネル及び床パネルを使用することにより1日で完了できる仕組みを作り、短納期で納めることと共に、大工さんによる技術差異が出来るだけでないような工夫をすることです。
――さまざまな工夫のもとに、会社を社長と二人三脚で大きくされてきたのですね。特に建築業界は、慢性的な人材不足や働く人々の高齢化に悩まされていると聞きます。
そうですね。当社が関わる建設現場では、平均20-25kgのパネル取り付け作業があるのですが、多くの高齢の大工さんがその作業を担っていました。身体の負担が大きいその作業では、怪我等で休業となるリスクが常にありました。ただ、若い大工さんが育つまでは、高齢の大工さんに頑張ってもらわなければならない、若い大工さんに引き継ぐためにも今の大工さんたちには長く仕事を続けていただきたい。そんな思いで、私たち経営陣も彼らの省力化を実現するために必死で情報収集していました。そんな折、現社長の勝田 優社長が新聞で見つけたのがマッスルスーツだったのです。
――その目論見は、うまくいったのでしょうか?
前述のように、最初は実際の建設現場で作業する高齢の大工さんたちに使ってもらおうと思ったのが、マッスルスーツ導入の始まりでした。ただ、現場の中では「安全性の確認が取れない」とのことで使用を断念せざるを得なかったのです。
建設業は、労働災害の割合が一番多いといわれる業種なので、大工さんたちは通常なにも身につけないか、つけたとしても腰袋だけの状態で仕事をします。それが建設現場でマッスルスーツを装着して作業していて、万が一転倒・転落した場合、たとえ一段の高さでも重度の怪我、労働災害につながる可能性があると。また現場の通路や足場内を歩くことが危険という意見もあり、諦めざるを得ませんでした。
目論見通りに行かなくても、発想の転換で別作業での使用を「習慣化」
――私たちとしても残念です…。結局、どうなさったのでしょう?
さぁ、どうしようかと(笑) せっかく省力化を考えてマッスルスーツを導入したのだし、建設現場が無理なら社内で有効に使える作業はないか、また一から策を練りました。当社は住宅資材メーカーです。製造をメインにしているので、工場内ではさまざまな作業工程があり、中にはどうしても機械化できない作業があります。
工場では、1日中同じパネルを作る作業があり、その過程にある20kg前後のパネル持ち上げ作業は、通常1人で行います。終日繰り返すその作業は身体への負担が大きく、疲れから作業効率が落ちてしまうだけでなく、休職に至った従業員もいるという課題を抱えていました。そのため、その作業ではマッスルスーツを装着することとし、作業時間内で装着するよう指導し「習慣化」していきました。
導入当初の約半年間を検証期間と定め、装着して行う作業内容や使用時間など、さまざまな見地から検証を行いました。そうしていくうちに、1日中装着したまま作業するというのは余計に疲労が増すということも分かり、適度に、時間帯は問わず疲れを感じるときのサポーターとしての意味合いで使うよう指示したところ、従業員の平均使用時間は約2時間でした。
――実際にどんな作業で使用され、従業員の方からはどのような感想がありましたか?
当社の工場でマッスルスーツに最適な作業といえば、まずは仕分け(ピッキング)作業ですね。出荷前のさまざまなパネルを運ぶ必要があり、一番効果的に活用できると考えています。それ以外も、作業位置が低くて中腰になりやすいプレス工程の作業にも向いています。
工場の従業員からは、「マッスルスーツを装着して作業をし始めてから、翌日の朝の目覚めが良くなった。腰が辛くて2週間に一度は治療に行っていたが、もう今では行かなくて済むようになった」と報告を受けました。ほかにもいろいろな感想があがってきたため、今では使いたい従業員が使いたい作業で、自由に使ってもらっています。
腰の悩みによる休職は、半年間でゼロに
――御社はマッスルスーツを、発売翌年の2015年から導入いただいています。このような労働環境改善の取り組みで、一番よかったと思われるポイントはどこでしょうか。
大手の建設会社さんは、労働者環境を改善しようという思いが強いと認識していますが、我々のような中小企業のほうがまだまだそのへんの認識が甘いと感じています。ただその点では、当社は会社の方針として、以前から作業の省力化を追求し、従業員の負担を軽減することによって「社員の健康を守ることが作業効率改善につながる」という意識の下、経営を続けてきました。
そんな経緯もあって早い時期からマッスルスーツを導入したわけですが、「作業効率改善」と「社員の健康」を同時に達成したことで「従業員満足度の向上」にもつながったことが、大きな成果と考えています。導入前に比べて生産性が上がったことは、マッスルスーツによる疲労感の軽減が大きく寄与していると感じています。導入期の半年間の検証期間の結果、腰を痛めたことによる休暇はゼロに激減し、経営リスクの回避も実感しました。
――最後に、今後どのように活用していきたいかなどあれば教えてください。
当社は、依頼があれば、マッスルスーツの同業他社への貸し出しも行っています。今後は当社で成功したモデルケースをベースに、現場で働く職人さんなどにも紹介し、人材不足に悩む建設業界全体をマッスルスーツで元気にしていきたいと考えています。従業員の身体を守り働きやすい環境づくりを行うことは、日本の社会問題である人材不足への対策として重要です。これからさらに増えるであろう住宅資材の需要に対しても、マッスルスーツを活用していきたいと考えています。
お話を伺った当日は、腕上げ作業用のマッスルスーツ GS-ARMを、工場内でパネルを持ち上げ、移動する作業で試してみたいとリクエストをいただいたので、実際に試していただきました。装着して作業をした従業員の方からは、「パネルを持ち上げてからの腕がかなり楽に感じますね」と好評でした。
これからも勝田産業株式会社で成功したモデルケースを建設業界に波及させ、同業界の活性化につながるよう、私たちは従業員のみなさまの身体を支える立場から支えていきます。