茨城県の県北地域に位置する常陸大宮市でいちご農園を営む都竹(つづく)大輔様。30代前半で脱サラし、縁もゆかりもなかったこの地で「つづく農園」をはじめて17年目になります。現在では妻の友美様、そして5人のパートさんと共に、いちご栽培・直売所・いちご狩り園を切り盛りしています。
都竹様とマッスルスーツの出会いは、茨城県農業総合センター園芸研究所からの依頼で、農林水産省スマート農業実証プロジェクト「新しい時代を切り開く直売型スマートイチゴ生産・経営モデル実証コンソーシアム」に参画したことに始まります。どんなかたちのスマート農業を実証するかを夫婦で話し合い、アシストスーツの実証調査を令和2年から3年にかけて行いました。
実証実験の終わった現在も、マッスルスーツ Every(エブリィ)をパートさんたちと活用いただいている都竹様ご夫婦にお話を伺いました。
土耕栽培を長く続けたい。マッスルスーツで作業効率アップと従業員満足を両立【いちご農家 つづく農園】
いちご土耕栽培を続ける新しい選択肢に
――スマート農業の実証プロジェクトで、なぜアシストスーツの実証調査を選んだのですか?
都竹大輔様(以下、敬称略) 我々のようないちごの土耕栽培は腰痛との戦いが必須で、腰への負担を軽減したいというのがうちの嫁さんからの要望でした。それでマッスルスーツを試してみたところ、中腰姿勢の連続作業の負担が軽減されると感じ、実証実験をということになりました。
土耕栽培は夏場の定植作業と12月から4月までの収穫作業のほとんどを中腰姿勢で行うので、作業中の一定時間は「腰伸ばし」の時間を取らないと身体がもちません。それがマッスルスーツを使うと、腰伸ばしの時間が減る分、連続して作業ができるんですね。定植作業は9月初旬の暑い時期に行うので、ハウスの中にいる時間も減らすことができ、非常に効率的に行えました。
――マッスルスーツを導入した決め手は?
都竹 ほかのアシストスーツと比べ、マッスルスーツは比較的安価なところですね。うちでは5台納入して、一人一台、パートさんが気軽に使える体制をとりました。
――素晴らしいですね。実際、一人一台使えるような環境が整っていることは、意外に少ないと思います。
都竹 うちはパートさん5名のうち4名が10年以上勤めていただいています。地元の雇用維持のためにも、パートさんたちには少しでも長く勤めてもらいたいと思っています。
――マッスルスーツは多くのいちご農家さんに導入いただいています。やはりそれだけ腰に負担のかかる作業が多いのでしょうか?
都竹 いちご農家は農業の中でも重労働といわれる作業が多く、特に土耕栽培を続けているとどうしても腰痛で身体が辛くなってくるんです。そうなるといちご農家を辞めるか、高額投資をして高設栽培に切り替えるか、今まではその二択しかありませんでした。でもうちはどうしても、香りと味の濃いいちごができる土耕栽培にこだわって、いちご農家を続けたかった。今回マッスルスーツを導入することによって、少額投資で土耕でも長く栽培できるようになったので、新しい選択肢が出来たと思っています。
年間130時間、10a換算で13万円の労働コストを削減【実証実験の結果より】
つづく農園様が参画された、農林水産省スマート農業実証プロジェクト「新しい時代を切り開く直売型スマートイチゴ生産・経営モデル実証コンソーシアム」は、直売イチゴ経営におけるスマートフードチェーン構築による、データ駆動型高収益経営体系の実証プロジェクトを指します。中山間地における直売型イチゴ経営において、生産から販売まで一貫したスマート農業(スマートフードチェーン)を展開し、高収益イチゴ経営を実証する取り組みです。そのうちの「イチゴ栽培で問題となる腰痛対策と作業性向上を目的としたアシストスーツの活用」という項目で、アシストスーツ(マッスルスーツ Every)の実証調査が行われました。
夏場に行う定植作業と、秋から春先にかけて行う収穫作業において、それぞれ「慣行区(アシストスーツ非着用)」と「アシストスーツ着用区」での、①育苗管理、②定植、③マルチ狩り、④収穫、⑤その他の作業においてかかる時間を比較したところ、いずれもマッスルスーツを着用時のほうが短時間で行えることが実証されました。特に中腰姿勢が続く定植、収穫作業では大幅に時間の短縮を実現でき、それが結果的に労働費削減・労働効率アップにつながりました。
パートさんが疲労で休むことが減って、シフト調整も楽に
――奥さまは実際に使ってみて、いかがでしたか?
都竹友美様 一番ありがたかったのが、ずっと腰をかがめながらやる夏場の定植作業です。
マッスルスーツを使う前はただただ我慢の連続で、休憩(腰伸ばし)する時間がかなりありました。それでも次の日に疲労が残ったりして、いちご農家を長く続けていくことの不安は常にありましたね。
マッスルスーツを使うようになってからは、パートさんたちが疲労で休むことが減ったのがありがたいなぁと。急に人手が足らなくなっても、収穫は待ってくれないので、以前は慌ててシフトを調整しなければならないこともあったのですが、そんなこともずいぶん減りました。パートさんたちには家庭と仕事と両立しながら、長く続けてもらえたらと思います。
私たちのことを常に大切に考えてくれているから、長く勤め続けたい
――パート従業員のみなさんは、マッスルスーツを使うようになってから、なにか変化はありましたか?
パート従業員 今枝様(左) マッスルスーツを装着しているときは、収穫体勢を中腰のまま行けるような感じです。していないときと比べればかなり楽です。
パート従業員 廣木様(右) マッスルスーツを使っていないときは負担が多くて、家に帰ってからも腰を押さえているような感じがずっと続いていました。装着した日はやはり腰が楽で、帰宅後の家事への移行が早くなりますね。
お子さん同士が同年代だったこともあり、子どもたちが小さい頃は、事務所を託児所状態にして、仕事の傍ら交代で子どもたちを見ることもあったそう。都竹様ご夫婦のそんな心遣い一つひとつがうれしく、仕事で疲労がたまっても、精神的なストレスがたまることはなかった、とパート従業員のみなさんは口をそろえます。都竹様が作業者全員にいきわたる台数のマッスルスーツを導入したことは、従業員の働きやすい職場環境を作り上げることを第一に考える、つづく農園の経営姿勢の賜物といえるかもしれません。
「マッスルスーツが経営効率化につながっていると実証されて、よかったですね」と尋ねると、「効率化もそうだけど、なにより、パートさんたちが毎日元気で出てきてくれることがいちばんです」と答える都竹様。
「今や地元出身の私たちよりずっと、地元を知ってるんですよ」とパートさんが太鼓判を押すほど、この地にしっかり根付いた生活を送る都竹様ご夫婦が、地元の方々といつまでも「つづく農園」をお元気で続けられるよう、マッスルスーツはこれからもしっかりと、みなさまの腰を支えていきます。