人時生産性アップのための、伝統企業の取り組み。年齢・性別を問わない仕事現場の実現を【飯尾醸造】

京都・宮津にあるお酢屋さん「飯尾醸造」。創業明治26年、128年の歴史を持つ老舗の食酢メーカーです。

原料となる無農薬のお米作りから手がけ、伝統的な製造方法を続ける飯尾醸造では、多くの手間と時間をかけたこだわりのお酢作りを貫いています。

今回は、「現場の省力化や効率化」を目指しマッスルスーツを導入した事例を紹介します。製造現場が抱える課題や、マッスルスーツがもたらす効果と期待について、飯尾醸造の蔵人頭(くらびとがしら)、秋山俊朗さんにお話を伺いました。


▼ご利用中のマッスルスーツ:ソフトフィットSMサイズ

昔ながらの醸造・お酢造りの現場。これからの在り方は?

インタビューに答える秋山さん

――普段はどういった作業をされていますか?

原料となるお米や芋を運搬する作業や、精米する機械に入れる作業、計量したり、仕込んだり、洗ったり、運搬する作業が挙げられます。弊社では酒造りもしていますが、そちらは10月から準備に取りかかり、11月は芋の酒作り、その後に米の酒、玄米の酒を作って、もう一度芋の酒を作ります。

お酢の原料は様々ですが、うちではお米が圧倒的に多くて年間60トンくらい。芋は10トン程扱います。

――お米と芋の作業では、一日に多いときだと何キロくらい扱いますか?

精米するのは1トンくらいでしょうか。30キロあるお米の袋を出し入れする作業や、精米したお米を同じ袋にいれる作業、また積み上げる作業も発生します。原料に使用する米の精米は外注するのが普通ですが、我々はずっと農薬を使わないお米を地元で使っていることもあって、コンタミ(異物混入)のリスクも考え自前でやっています。

芋の場合、11月中に生産者さんから計10トンがまとめて運ばれてきます。全ての芋を専用機器で洗いますが、芋が20キロくらい入ったかごを流して、洗って、かごで受ける。この計量するときにどうしても人の手ではかりにのせる作業が生まれるので、腰に負担がかかります。

――お話を聞くだけでも過酷な作業ですね…。現場で働いている方が、業務で身体的な負担を抱えることはありましたか?

勤続30数年の方だと、長年の負担の蓄積もあり、身体につらいところがあるようです。手仕事が多いので、どうしても身体への負担は防ぎ切れない。

これまで身体に不調がある人に対してはシフトを調整したり、休憩時間を設けたりしていましたが、若いメンバーにも同じようなつらい業務をそのまま引き継いではいきたくないという思いがあります。年輩の人もこれから筋力が弱まるので、長く働いてもらうためにもちゃんとサポートする必要があると感じています。彼らが健康を維持しながら定年まで働ける環境づくりは、常に配慮したい点です。

――年齢による業務への支障以外に、意識している働き方の推進はありますか?

現場の効率化と省人化を進める一方で、女性が活躍できる環境や働き方も推進していきたいと考えています。実際に、女性の農学系とか食品系はすごく人気があるんです。とはいえ、現場で力仕事ばかり残っている業界は難しい。品質管理の業務だけでなく、作り手を希望する女性に対し積極的に働きたいと思っていただける環境を整える必要がありました。

食品の製造現場のキモは衛生面。マッスルスーツ導入の経緯

業務改善を推進する立場にある秋山さんは、従業員の身体への負担軽減はもちろん、現場の効率化や省人化、生産性の向上を常に検討していました。そんな中で、マッスルスーツのデモ機を使用し、ソフトフィットを導入されています。

――マッスルスーツを導入しようと思ったきっかけは?

もともと現場の効率化や省力化できる何かはずっと探していて、アシストスーツも数年前から知っていました。展示会などで試してみたりしていましたが、ほとんどが電力を使用したもので。我々は食品会社なので、使うものは水で掃除します。その点で導入はなかなか難しい。また、当時のアシストスーツは100万円単位のものでしたが、値段の割にやれることは限定的だし、ということで見送っていました。そこに約15万円で買えるマッスルスーツの登場です。電力不使用で掃除の点もクリアするし、11月の原料入荷する前の、つらい作業がはじまる前のタイミングで買ってしまおう、となりました。

――やはり飯尾醸造さんのような製造の現場で大きくオートメーション化してしまう、というのは実際難しいのでしょうか?

大手メーカーさんのように製造ラインの最後まで機械で自動化するには1千万単位でお金がかかりますし、広大なスペースが必要ですし、工場内をフォークリフトで回れるのが前提になります。

我々のように創業から128年、昔からの蔵を改装して使っているようなところはフォークリフトが入れず、大型機械を入れてしまってもその後あまり意味がなくて。他社さんの現場も何かヒントがないかと訪問しますが、便利なものも稼働率が低くなり、結局使われない、というケースも多く見てきました。

製造現場では、大は小を兼ねないんです。

――現場の効率化と費用対効果のバランスを探っていたんですね。

そうです。フルオートメーションできるほどの会社の規模ではない点が、最も機器の導入を妨げていました。大規模な製造現場にフィットするものはいくらでもあるが、中小規模にフィットするものはなかなかない。

その点でマッスルスーツは15万円と低価格。食品を取り扱うので、衛生面からもマッスルスーツは丸洗いできる。空気の力で筋肉アシストという仕組自体が新しかったので、これは面白いなと感じました。今までとは全く違う発想、まさに中小規模かつ食品を取り扱う我々にはフィットする商品です。



目指すは作業の平準化・省力化。多様な人材への配慮を

――実際にマッスルスーツの使用感はいかがでしたか?

肌感的には、負荷が4割くらいに楽になったと思います。これはいけると思いました。ようやくいいものを見つけたと。正直いうと、もし使える場面が少なかったとしても、100万クラスの機器だと痛いじゃないですか。ただこれであればうまくいかなくても、設備投資額的に許せる金額です。

全員分配布するにしても、従来のアシストスーツの金額と比較してこれしかないと思いました。商品設計のアプローチが全く異なり、これこそイノベーションだなあと。

――現場の方の反応はいかがですか?

正直全員が納得して使っているわけではないと思います。マッスルスーツを使う目的は従業員の安全や身体を守る意味合いが強くて、スピードや効率が上がるものではないからです。

ただ、そこは酒蔵の杜氏が理解しているので積極的に使ってみようとしてくれています。なぜなら、杜氏が従業員それぞれの身体の調子に合わせてシフトや作業の調整で一番苦労しているからです。この人はこの作業から今日は外そうとか、連続勤務はつらいかな、とか。これがアシストスーツを使うことで負担軽減され、誰でもある程度仕事ができる状態、平準化できれば杜氏の苦労も減っていきますよね。

――ありがとうございます。シンプルな構造で耐久性が高いので、いろんな業務で使用いただきたいです。

メイン業務以外にも、雪かきで活躍しましたよ。

多い時では5~60cm積もるのですが、うちは住宅街にあるので大きな機械でやると近所迷惑になるので。今シーズンも降ったら必ずマッスルスーツを使って雪かきしていました。

――マッスルスーツの導入で、最終的に目指している製造現場の目標はなんでしょうか?

業務の省人化と平準化です。女性であれ男性であれ、社員であれパート社員さんであれ、誰もが活躍できる環境の構築が重要になります。年齢が重なり体力がなくなったことで業務から外れる、女性だからこの業務が難しい、というのは不幸かなと思うので。

――力仕事の負担軽減がポイントになりそうですね。

身体的な負担がかかる業務には、何かアシストが必要でした。マッスルスーツの導入により、男性にしかできないと思われていた出荷作業を今は女性にもやっていただいています。

あとは従業員の意識改善が大事ですね。業界では「安全第一」という標語がありますが、実際の現場では安全よりもスピードや効率を優先しがち。ただ、健康や安全は面倒くさいで済まされる問題ではないので、今は健康な従業員にもマッスルスーツを活用してもらい、身体への負担軽減を進めていきたいですね。

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