将来への不安……介護現場が抱える課題を解決する変化とは?【砧ホーム】

負荷の少ない介護を目指す。社会福祉法人友愛十字会・砧ホーム

少子高齢化が深刻な社会問題になっている今、2025年には認知症高齢者が730万人を超えるという予想もあり、老人ホームをはじめとする介護施設の需要は今後さらに高まると言われています。しかし、介護業界は慢性的に人出不足という問題を抱えています。その原因のひとつが、体力面の不安や課題です。

東京都世田谷区にある社会福祉法人友愛十字会・砧ホームは、定員60名、併設のショートステイ4名、計64床の特別養護老人ホーム。現在18名のスタッフに対して6台のマッスルスーツを導入し活用しています。人材の確保は砧ホームにとっても大きな課題で、同ホームの鈴木健太施設長は、「できるだけ負荷の少ない介護の実現」を模索していく中で、マッスルスーツを導入されました。

今回は鈴木施設長をはじめ、実際にマッスルスーツを使用している砧ホームの職員に、介護現場における悩みや課題、そしてマッスルスーツがもたらした変化について伺いました。


▼ご利用中のマッスルスーツ:タイトフィットSM&MLサイズ

肉体的負担が人材確保難や休職・離職の原因に

マッスルスーツ導入のきっかけとは

―― はじめにマッスルスーツを導入することになったきっかけを教えてください。

鈴木施設長 私は、人の生活が道具によって進化してきたことから、介護という仕事も道具によって進化できるはずだと考えています。そこで砧ホームでも、できるだけ負荷の少ない介護の実現を目指し、さまざまな福祉用具や介護ロボットについていろいろ情報を集めて試してきました。そのひとつがマッスルスーツです。

―― いくつか候補がある中でなぜマッスルスーツを選んでいただいたのでしょうか?

鈴木 福祉用具を導入するにあたり、安全であることは大前提ですが、使用者となる介護スタッフに余計な気を遣わせないことが重要だと思います。なぜかというと、介護スタッフが気を遣う必要があるのは、介護ロボットではなく施設の利用者だからです。そのうえで、マッスルスーツを選ぶ決め手となった特徴は3つあります。1つめは「電気を使わないこと」。充電の手間やランニングコストがかからないほか、稼働時間を気にする必要もありません。また、ほとんど故障がないということもメリットといえます。2つめは「装着のしやすさ」。慣れてくれば10秒程度で装着が完了するので、すぐに使える状態になれるということは使いやすさに直結します。3つめが「丈夫さ」。マッスルスーツは壁やドアなどのかたいものに多少当たったくらいではダメージを受けません。丈夫さゆえに余計な気を遣わせないということも、使い続ける上では大きなメリットです。

―― 現場では、実際にどのような悩みがあるのでしょうか?

石川さん(女性) 介護の仕事はいろいろありますが、なかでも大変なのが「排泄介助」や「移乗介助」。利用者の動きに合わせてゆっくり、丁寧にサポートする必要があるため、見た目以上に体力が求められます。自分より大きな方を介助するときは特に大変ですね。

―― 具体的に、どのように“大変”なのでしょうか?

捧さん(男性) 移乗介助や排泄介助では、屈んだり、少し膝を曲げた中腰の姿勢を維持しながら介助したりしなければいけないので、腰を痛めてしまいやすいという点です。

板垣さん(女性) 私も長く腰痛に悩まされているのですが、つらいときは介護そのものができなくなるので、お休みをいただくことが何度かあります。

―― 腰への負担が大きいんですね……

元山さん(男性) そうですね。特に排泄介助は、シフト人数の少ない夜勤時は1、2時間くらい通しでおこなうこともあり、利用者をケアしながら中腰姿勢のまま5分から10分くらい同じ姿勢を保たなければいけないときもあります。そうした介護に必要な動きや体勢そのものが腰を痛める原因になっていて、多くの介護現場で共通する悩みになっています。この仕事は、一度、腰を痛めてしまうとなかなか仕事を続けるのは難しく、腰痛がきっかけでやむなく離職される方が多いのが現状です。

 あと介助は、支える位置や力加減などでかなり変わってきます。それは技術でもあるのですが、たとえばあと数センチ低い姿勢がとれれば利用者にとって楽になることはわかってはいるけれど、腰が痛いとそこにいけなくなることがあります。丁寧な介助をすることは当たり前のことなのですが、それが疲労や腰痛でできないときは、悔しいのと申し訳ないという気持ちにもなります。腰痛は介護者にとって悩ましい問題です。

つねに質の高いケアをするために

マッスルスーツ導入の効果

―― そうしたみなさんの悩みを少しでも解決するために、鈴木施設長はマッスルスーツを導入されたわけですが、実際に仕事で使ってみて変化はありましたか?

元山 最初は、誰もこうした器具を使ったことがなかったので不安もありましたが、みんなで話し合いをしながら少しずつ慣れていくと、介護が楽になりましたね。たとえば排泄介助や移乗介助で中腰姿勢のままひねる動作や、下にあるものを持ち上げるときもマッスルスーツが動きをサポートしてくれるので、腰への負荷は間違いなく軽減されたように思います。前よりも介助の動きがスムーズになってきたようにも感じますね。

板垣 特に中腰姿勢のときに、姿勢を補助してくれることが助かります。元山さんの言うとおり腰が楽になって、仕事を終えたときの疲労感もだいぶ変わってきました。たとえば、特に夜勤明けはとても疲れが残って、そのあとの休日は腰の痛みもあって安静にしているか、接骨院で治療してもらったり、マッサージに行ったりすることが多かったのですが、マッスルスーツを使うようになってからはよく休日に出かけるようになり、自由時間が増えてきました

 私も余裕を持って介助ができるようになったことを実感しています。その結果、使っている職員もそうですが、介助を受ける利用者の方々も安心感を持ってもらえるようになった気がします。長い時間、働いているとどうしても最後のほうは疲れてきてしまうのですが、最後まできちんとケアできるようになったことは、私にとってはうれしい変化になりました。

元山 たしかに長時間、働いても疲労感や腰痛で悩むことが減ってきたので、全体的に1人1人に対するケアの質も上がってきましたね。

板垣 それと私は気持ちの面でも楽になれたような気がします。マッスルスーツを使用したからといって腰痛がゼロになるということはないのですが、腰の負荷を軽減してくれるので、不安よりも前向きに、気持ちに少し余裕を持てるようになりました。

 長くこの仕事を続けられるという安心感は、私もすごく感じています。つねに丁寧な介護をするためにも、長くこの仕事を続けるためにも、腰を大切にしなければならないので、マッスルスーツはこれからも使用させていただきたいと思っています。

介護を長く続けられる仕事に

マッスルスーツ導入で、長く働ける魅力的な環境に

公益財団法人 介護労働安定センターの「令和元年度 介護労働実態調査」によると、介護従事者の離職率は15.4%。そのうち就職してから3年未満で離職した方が64%にも上ります。この高い離職率の原因のひとつに、身体的な負担が大きいことが挙げられます(※)。

勤続年数が長くなれば経験値も高まることから、施設としてはベテランの存在は重要で、長く働き続けられる環境づくりは鈴木施設長にとって大きな課題だったと言います。

「介護職員は、みんな志を持って入職してくれますが、やはり体力的な面で不安を抱えている方が多いのが現実です。だから、マッスルスーツのような機器の積極的に活用していきたいと考えています。装着型の移乗支援ロボット全般に言えることですが、『装着の仕方』によって、その後の活用の運命が大きく左右されます。導入する際は装着の仕方について十分レクチャーを受けることと、使用者の体格に合ったサイズを選択することが重要。スタッフたちが十分活用できる環境を整備して、誇りを持って長く働ける魅力的な環境をつくっていきたいと思っています。」

*出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和元年度『介護労働実態調査』の結果

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